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大奥シーズン1 全体の感想

 

 

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NHKで放送された疫病の流行により男女が逆転した世界を描いた『大奥』が最終回を迎えたので、これまで書いた各話の感想と作品の基本情報をまとめ、ドラマ全編を通した感想を新たに書き加えました。

 

各話感想

第1話 吉宗編、水野殺されかける
第2話 家光編スタート
第3話 家光出生の秘密
第4話 春日局死去
第5話 家光編終了綱吉編へ
第6話 松姫の死
第7話 綱吉薨去
第8話 吉宗編再開
第9話 赤面疱瘡流行
第10話 吉宗薨去

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大奥 - NHK

 

 

基本情報

原作

よしながふみ氏による同名漫画が原作です。隔月刊誌melodyで2004年から2021年まで連載されました。

謎の疫病が流行し男子の人口が急減した世界を描いたSF歴史作品です。

主題歌

幾田りら「蒲公英」

過去の実写化

『大奥』(2010年10月1日公開)
出演 二宮和也 柴咲コウ
水野祐之進と吉宗のストーリーです

『大奥〜誕生[有功・家光編]』(2012年10月12日〜 TBSで放送)
出演 堺雅人 多部未華子

『大奥〜永遠[右衛門左・綱吉編]』(2012年12月22日公開)
出演 堺雅人 菅野美穂

本作の基本情報

今回実写化されるたのは

  • 三代将軍家光・万里小路有功編
  • 五代徳川綱吉・右衛門佐編
  • 八代将軍吉宗・水野祐之進編

の3編です。いずれも過去に実写化されたエピソードということになります。

全体の感想 

時代劇の面白さ

時代劇には大きく分けて二つの面白さがあるのではないかと考えています。

一つは別の時代を追体験できる面白さ、もう一つはその時代に現代を投影した面白さです。

このドラマには両方が兼ね備わっていますが、まず後者の現代を投影した面白さについて書きたいと思います。
このドラマには原作も含めて、男女の立場を逆転することにより現代社会の抱える問題点を浮き彫りにする目的があります。

その問題点とは女性の置かれた立場、生き辛さです(女性にとって生き辛い社会は男性にとっても生き辛いはずなので、男性の生き辛さについても描いていると思います)。
特に子供を産むことを強いられプレッシャーをかけられたり、どんなに才能があっても跡継ぎを残せるかどうかで評価されてしまう綱吉の悩みは現代にも通じます。
種馬のように扱われる大奥の男性たちも似た立場ですよね。

家光の抱えたトラウマは性被害者のそれですし、家重の無力感だって似たものを抱えた人はいるでしょう。

SFとしての面白さ

”男女逆転大奥”とだけ聞くと荒唐無稽な作品を思い浮かべてしまいますが、この作品は若い男性のみを死に至らしめるウイルスという設定を組み込むことで、もし男性の数が減少していたら社会はどのように変質していただろうか?という歴史シミュレーション、思考実験になっているんです。
「もし怪獣が東京に現れたら」というシミュレーションだった『シンゴジラ』のように、ある意味この作品は『シン・大奥』でもあるんです。
しかもそのシミュレーションのそれぞれがリアルでした。

一度に社会が変わるのではなく、徐々に男性に女性がとってかわり、最終的にはそれでは埋められないほどに人口減少・国力低下が進むという長期的なタイムスパンでの考察なんです。
そこに史実を入れ込んで解釈し直す手法は神業レベルだと思いました。

各章それぞれの悩み

吉宗・家光・綱吉という3つの章で構成されています。

それぞれに抱える悩みが違っていて、同じドラマでも内容は大きく異なりました。しかし時代絵巻といいますか、連綿と続いている感じはあって、
例えば猫の若紫を殺したことが後になって尾を引いていたなんていうエピソードがあるなど一体感は保たれているのも良いところです。
改革者であり部外者でもある吉宗からスタートして、奇異な大奥の風習がいかに生まれたか、その男女の苦悩の歴史を学ぶという構成も一体感が出た一因だと思いますね。

早足ですすむ

ここからは若干マイナスな意見です。

どうしても100年以上の歴史をたった10話で描き切るのは無理があります。
かつての映像化では家光編だけで10話費やしていますからね。
特に綱吉編は無意味に過ぎる時間というのが大きな意味を持つのに、その感じは展開が早いことで薄れてしまいました。

あと、大奥内での人間関係が優先されるため、将軍と側近の関係性はそれほど描かれず、毎回死に際にいきなりスポットライトを浴びる感じがしました。

世界観に広がりがない

これは上とも関連するのですが、基本的に大奥の中の出来事しか描かれていなくて、こじんまりしているんですよね。

大奥のドラマなんだからそういものかもしれないですけど、歴史SFとしては江戸の町の様子だとか、もっと登場しても良かった気がします。

作ろうと思えばスピンオフも作れるはずです。

そもそもの史実を知らないと面白さが半減する

これは仕方ないことなのでプラスでもマイナスでもありません。

先ほども述べた通り、このドラマは架空の病の流行を史実にあてはめるパズルの面白さがあるんですね。
でもこのパズルを楽しむためには、鎖国や生類憐みの令などの史実や、春日局がどういうキャラクターか、綱吉は?吉宗は?といった時代劇の教養を最低限知ってないといけないんです。
それほどマニアックな知識は要求されないので、知ってて当たり前ってことかもしれないですけど、もうちょっと補足があっても良かった気がする。

よしながふみさんの原作をテキストに歴史研究家があれこれ話す番組や動画があればより楽しめたんじゃないかな?

まとめ

なんでこんなことを言うかといいますと、男女逆転大奥っていう言葉を聞いただけで食わず嫌いしている、軽んじている人が一定数いると思うんですよね。
それはもったいないと思えるぐらいに面白い作品でした。
シーズン2の制作が発表されていますし、再放送等もあるかもしれません。
見逃した方にも是非観てほしい作品です。