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ハヤブサ消防団【各話感想一覧】

 

 

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中村倫也さん、川口春奈さん出演ドラマ『ハヤブサ消防団』が最終回を迎えたので、これまでに書いた各話感想をまとめ、新たに全編を通した感想を追記します。
田舎ならどこにでも起こりうる過疎化の問題をリアルに描きつつ、90年代の信仰宗教問題を現代にスライドさせ、二つを繋ぐキャラクターを配置した構成は見事でした。

放送日・各話感想

放送日ほか

木曜日21:00~ テレビ朝日系列で放送

ep01 2023年7月13日 感想
ep02 2023年7月20日 感想
ep03 2023年8月03日 感想
ep04 2023年8月10日 感想
ep05 2023年8月17日 感想
ep06 2023年8月24日 感想
ep07 2023年8月31日 感想
ep08 2023年9月07日 感想
ep09 2023年9月14日 感想

配信状況はこちらをご確認ください↓
ハヤブサ消防団 - ドラマ情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarksドラマ

基本情報

原作

池井戸潤『ハヤブサ消防団』

 

脚本

香坂隆史

主題歌

 ちゃんみな「命日」

 

キャスト

三馬太郎(中村倫也)スランプ気味の作家。
立木彩(川口春奈)映像ディレクター。

藤本勘介(満島真之介)団員。「八百万工務店」勤務。
徳田省吾( 岡部たかし)班長。呉服店「一徳堂」の二代目店主。
森野洋輔(梶原善)副分団長。町役場の土木課に勤務。
宮原郁夫(橋本じゅん)分団長。養鶏場「宮原養鶏」を経営。
山原賢作(生瀬勝久)部長。林業メーカー「山原林業」社長。

江西佑空(麿赤兒)「隋明寺」の住職。
野々山映子(村岡希美)住民。
山原浩喜(一ノ瀬ワタル)ハヤブサ地区に住む札つきのワル。

真鍋明光(古川雄大)「ルミナスソーラー」営業スタッフ。
中山田洋(山本耕史)出版社「草英社」の編集者。
山原展子(小林涼子)謎の女性。

相関図はコチラ↓
相関図・キャスト|木曜ドラマ『ハヤブサ消防団』|テレビ朝日 (tv-asahi.co.jp)

全編を通した感想

丁寧な演出

「連続放火の犯人は誰か?」というトピック自体はかなりゆっくり進行していきます。
放火も毎回起こるわけではなく、初回の波川宅、賢作の作業場、太郎の畑程度です。
また、浩喜が殺害された件も本格的な捜査が行われることはありませんでした。

もっといえば、第2話で怪しいとされた人物がそのまま犯人なんです。

普通なら変化に乏しく飽きてしまいそうなドラマですが、毎回演出に工夫が凝らされていて飽きないようになっていました。

地方の実情を反映

このドラマの舞台となったのは自然豊かな地方の集落・八百万町ハヤブサ地区です。
過疎化が進み、ソーラーパネルに飲み込まれようとしているというのが現代的でした。

数年前なら、ダム建設によって水没する村や、廃棄物処理場・原発などの誘致を巡り対立を深める住民などが題材として選ばれがちでした。
そういったものよりももっと身近に起こりうる問題としてソーラーパネルはリアルです。
太郎がハヤブサに引っ越したきっかけも父親が死んで「空き家」となった家を処分するためでした。
地方に住む人だけでなく、都市に住む人々にとっても何かしら関わりのある題材だと思います。

謎の宗教組織

極めて現代的な問題としてソーラーパネルが扱われる一方で、謎の宗教法人・アビゲイル騎士団は明らかに90年代のオウム真理教をモデルとしています。

実は少し時代がずれているんですよね。
もちろんオウム真理教をめぐる問題は今も続いていますし、その他の宗教の抱える問題も近年注目を集めましたので、完全に「古い」とは言い切れません。

その信者・立木は都市で社会に使い捨てられ疲弊していく現代人(若者)を象徴しています。
田舎を描く本作ですが、都市に暮らす人々にも感情移入しやすい人物が用意されているのも本作の特徴だと思います。

氷河期世代を代表する省吾

象徴という意味で言えば、90年代の社会不安と現代の過疎化する地方をつなぐ存在として、おそらく氷河期世代(もっと前の時代を含む)の省吾が登場します。
田舎から夢をもって東京に出たものの、挫折して再び田舎に戻った彼は心の中にモヤモヤしたものを抱え続けていました。
「特別ではない自分」を受け入れられず、安易な答えをくれる宗教にのめりこんでしまいます。
現実に自分が暮らしている世界より、どこかにあるかもしれない理想郷の方をリアルに感じてしまう人間の弱さと悲しさが描かれていました。

小説家の仕事・消防団の使命

このドラマの最大の特徴は村の消防団員がハヤブサを守るために奮闘するところです。
ハヤブサを守りたいという一心でボランティアで雑務をこなす彼らを主人公に据えたのは面白かったですね。
粗暴な部分があるけど人情深くて世話焼きな彼らは魅力的でした。

さらに太郎は小説家としてミステリーを解くように放火事件を解明していきます。
しかし、他の小説家が探偵役のドラマとは異なり、単に事件の真相を開陳するだけでなく、調査した内容を小説としてまとめ上げ、立木の説得に用いるんです。

杉森との対決など言葉を生業とする小説家の仕事が魅力的に描かれています。