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いちばんすきな花【第4話感想】

 

 

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多部未華子さん、松下洸平さん、今田美桜さん、神尾楓珠さん出演ドラマ『いちばんすきな花』第4話が放送されました。夜々の抱える恵まれた容姿という悩みを「人形」という言葉を自在に転回させることで解決の糸口を見出す手法は優れた脚本家の手腕がなせる業だと思います。

 

放送日・あらすじ

放送枠

フジテレビ 木曜日 22:00~

放送日

2023年10月19日

あらすじ

いちばんすきな花 - フジテレビ

配信状況は公式サイト、またはこちらでご確認ください↓

いちばんすきな花 - ドラマ情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarksドラマ

基本情報

原作

ありません

脚本

生方美久(過去作:『silent』)

キャスト

潮ゆくえ(多部未華子)
春木椿(松下洸平)
深雪夜々(今田美桜)
佐藤紅葉(神尾楓珠)

潮このみ(齋藤飛鳥)
望月希子(白鳥玉季)
穂積朔也(黒川想矢)
白石峰子(田辺桃子)
相良大貴(泉澤祐希)
小岩井純恋(臼田あさ美)
赤田鼓太郎(仲野太賀)

相関図はコチラ↓
いちばんすきな花 - フジテレビ (fujitv.co.jp)

感想

夜々の悩み

夜々(今田美桜)の悩みは大きく分けて二つありあります。
一つは「女の子らしく」あるようにしつけられ育てられたために本当に好きなことを我慢して生きてきたことです。
ジェンダー的な悩みですね。

もう一つは恵まれた容姿のために周囲から羨望のまなざしで見られ、外見だけに価値を見出され、存在を軽んじられているという悩みです。
ルッキズム的なやつです。

抱えるコンプレックスを一言で説明できる他の3人に比べて、夜々の場合は一見性質異なる二つの悩みがごっちゃになって紹介されていたため「どういうことなのだろう」と思っていたのですが、今回整理されました。

文字通り「お人形のように」扱われ、意思のない人間だと思われているという説明により、ルッキズムとジェンダーの問題が一つに合流しています。
この整理の仕方・一見異なる性質のものをより本質に遡ることで定義しなおす手法は素晴らしいですね。

人形とは?

第4話は夜々が人形から一人の人間へと生まれ変わる過程を描いています。
その過程で「人形」の意味するところが自然とスライドしています。

最初は女の子の遊び道具の象徴としてジェンダー的な意味合いで登場しました。
「お人形さんみたい」というのは容姿に対する誉め言葉ですよね。
「マスコット」「看板娘」はこの意味での「人形」の同義語です。

母親が登場したあたりで少しずつ意味合いが変わってきます。
男の子と同じように育てられた夜々の母親は夜々をまるでお人形のように育てたようです。

話がわきにそれますが、「どうしても女の子が欲しくて」という話はよく聞きますよね。
こういうことを言っている人も別に深い意味があって言っているわけではないでしょうし、そこまで真剣に「女の子が欲しい」と思っていたわけでもないかもしれないですが、この言葉は裏の意味を突き詰めると結構残酷な面があるんですね。
「もし女の子が先に生まれていればあなたを生むつもりはなかった」ともとれますし、「兄たちはハズレ」と言っているようにも聞こえます。
なるほどたしかに誰一人良い気持ちがしない言葉です。

夜々の親

話を元に戻して、夜々の母の夜々に対する接し方は人形遊びの人形に対するものなのです。
ここで「人形」は自分の意思や価値観を投影する存在にスライドしていますね。
さらにゆくえの妹のエピソードを通して、「人形」とは「反論してこない存在」であると定義し直されます。

夜々の抱える問題は美醜の問題、恵まれたルックスを持つものの悩みだとされていましたが、行方との対話を通して、自己主張のなさにこそ問題の根源があることが発覚するんですね。
そのように判明したことで解決不能に思えた問題の解決の糸口が見え始めるんです。

おそらく夜々自体が気付いていなかった自身の悩みの本質をとらえる瞬間に、視聴者として立ち会えたのがカウンセリングを覗き見ているようで面白かったですし感心してしまいました。

母親の方も夜々の行儀の悪さを友達のせいにして悪く言うなど、登場時は娘に依存していて嫌な感じでしたけど、結構物分かりが良く、自身の理想を押し付けていたことを謝り、辛い思いをしながらも付き合ってくれた夜々に「ありがとう」と声をかけていました。
夜々にかかっていた呪いが解け、自由を手に入れた瞬間ですね。

夜々も母親のことも、ピンクやスカートだってが嫌いなわけでもないところも良いですね。

他にもっと好きなことがあるだけで、好きか嫌いかの二者択一ではないし、好きな人の中にも嫌いな部分があるという、当たり前でありながら案外忘れがちな点にも言及していますし、優しくおおらかな人間観に好感を持てます。

保健室の先生

全体的に今回の夜々のエピソードは面白かったのですが、保健室の先生のところはイマイチ意図がよくわかりませんでした。
話に飛躍があるような気がするんですよね。
夜々を傷つけないために「あてはめ」や分類をしてしまった保健室の先生のエピソードには不自然さを感じます。
普通何が辛いのかを聞き出そうとするんじゃないかな?

それに、「そういう人はより不幸な人を持ち出して慰めてくる」っていうのもよくわかりませんでした。

「多数派の辛さ」という言葉も夜々の悩みと合致しているのかな?って思っちゃいました。

いちばんすきな花

閉店間際の美容室を訪れた椿と夜々がいちばんすきな花について会話していました。

夜々がアジサイが好きと言っていたので、てっきり「アジサイは土壌のpHによって色が変わる」からかと思ったのですが、全く関係なかったみたいです。

単にかたつむりが好きなようですね。
椿も「一番好きな花はない」と答えていて、彼らの価値観やスタンスが表現されています。
それぞれ特定の花をあげているわけではないのが面白いですね。

その他

椿と紅葉がばったり出会い前回の謝罪をしていました。
こういう感受性の豊かさが良いですよね。

「しょーもな」というセリフが再度登場しました。
周囲の目線を気にして自分がない態度のことを「しょーもな」と表現するようです。 

良い悪いと好き嫌いをごっちゃにする人、客観と主観を混同する人のことが「嫌い」だと言ってました。
脚本家の方の本音かもしれませんね。
そして紅葉が抱えた「理由がないけど好き」という感情をどのように解決するのかも気になります。

おわりに

「観る前と観た後で世界が違って見えてくる」というのは良いドラマ・良い作品の条件の一つだと思います。
このドラマはまさしくそんな感じで、鑑賞後は世界が(特に周囲の人が)違って見えてきます。

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