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阿部サダヲさん主演ドラマ『不適切にもほどがある』第8話が放送されました。テレビを見ていない人たちが大きな影響力を持ってしまっている現状への危惧を中心に不寛容な社会、一度の過ちすら許さない社会の息苦しさが描かれました。
放送日・あらすじ
放送枠
TBS 金曜日 22:00~
放送日
2024年3月15日
公式サイト
基本情報
原作
ありません
脚本
宮藤官九郎
キャスト
小川市郎(阿部サダヲ)
犬島渚(仲里依紗)
秋津睦実/秋津くん(磯村勇斗)
小川純子(河合優実)
向坂キヨシ(坂元愛登)
向坂サカエ(吉田羊)
相関図はコチラ↓
感想
アナウンサー
今回まず良かったのは倉持の職業をアナウンサーに設定したことです。
仮に俳優やタレントであれば基本的に自営業ですし人気商売なので「仕方ないよね」で終わってしまう面があります。
しかし、局のアナウンサーはテレビ出演者である一方でテレビ局の社員であるという一面も持ち合わせているんです。
視聴者とタレントの中間に位置する存在なので、観ている側も共感しやすいですよね。
局アナであることの意味が最も大きかったのは、不倫を理由とした長期にわたる謹慎処分や配置転換がバランスを欠き、「不当な配置転換」としてパワハラに当たるという指摘でした。
よくテレビ界や芸能界を批判するときに「一般社会ではありえない」という文言が飛び交いますが、むしろ芸能人に対するバッシングには逆の意味で「一般社会では許されない」苛烈さがあることが示されました。
見てない人々
テレビ番組に対して"見てない人々”が影響力を持ってしまっている現状が紹介されていました。
このドラマが問題視しているのがこたつ記事です。
こたつ記事とは記事の体裁をとりながらも独自取材をおこなっておらず、「こたつに入ったまま」かける内容の記事を指します。
テレビに関して言うと、ワイドショーのコメンテーターの発言を引用しているだけの記事などがそれにあたります。
大量生産される記事なので、そもそも記事としての質が低いという欠陥がありますが、このドラマで問題視されているのは一次情報を軽視している点でしたね。
具体的にはこたつ記事を見た人がコメントを残し、そのコメントを世間の声として記事化するこたつ記事が再生産される。
すると次第に「見てない人々」が2次3次情報をもとに騒ぎ出して炎上してしまうという構図です。
引用の連鎖により、見ていない人が見ていた人たちを飛び越えて無責任に(悪意を持って)バッシングをし始める社会の歪みには恐怖すら感じます。
私個人としては多寡にかかわらず有意義な意見には耳を傾けろというのが基本姿勢なのではないかと思いますね。
見ていない人でも放送内容に意見を持つことは当然ありうることだし、そんな意見の中にも有意義なものはきっとあるでしょう。
ただ、見ていた人たちよりも見ていない人たちの声が大きいことには確かに違和感があります。
その見てない人々の力の根源はスポンサーへの抗議のようです。
スポンサーに抗議すればテレビ局が無視できなくなるという構図が世間に知れ渡ったせいかキャンセルカルチャーが世界中で暴走しつつありますよね。(ミュージカルシーンがキャンセルされたのはそういう意味なのかな?)
テレビ局も編集権は自分たちにあることをもっと強調して毅然とした態度をとったほうが長期的にはいいはずですし、広告主も抗議が多かろうと少なかろうと自らの正義や価値観に従って判断することがスポンサーとしての責任ある態度だと思います。
それにスポンサーへの抗議という手法は広告によって成り立つ放送文化を毀損していくことになるので、視聴者自身が自分の首を絞めていることにもなりかねないんですよね。
誰も得をしていない、むしろ不寛容で息苦しい社会を作ってしまっているのに止められないもどかしさを感じました。
一方で、番組内容に意見がある場合の正規のルートが十分に整備されていないことも問題かもしれませんね。
第7話でもドラマを(じっくり)見ていない人たちの声に従ってドラマが制作されている現状への嘆きが描かれていました。
脚本家の宮藤官九郎さんがこのドラマを通して訴えたいことの一つにゆがんだテレビの現状への危惧があるのかもしれません。
パティオ
面白かったのが姿の見えないバッシングの声を栗田(山本耕史)のホームパーティを描くことで可視化・戯画化した点です。
妻の親友が栗田の17年前の浮気をいつまでも蒸し返す様子は醜悪でした。
親友といっても赤の他人ですし、無関係なんですよね。
でも、これってネット上で繰り広げられるバッシングと同じ構図なんです。
妻の側は栗田を叩くことによって夫にプレッシャーをかけている側面があり、夫の側は自分に火の粉がかかるのを避けるため栗田の肩を持つことをせず静観していました。
不倫スキャンダルが沈静化しにくい原因はこういうところにあるのかも。
「あなたたちのやっていることはこれですよ」っていう宮藤官九郎さんからのメッセージでしょう。
おわりに
第8話は渚の親離れや佐高の学校復帰なども描かれていますが、全体的に本筋とはあまり関係のない話が多かったような気がします。
残り二話でどのような終わりを迎えるのでしょうね。