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目黒蓮さん・有村架純さん出演ドラマ『海のはじまり』第8話が放送されました。これまでこのドラマを見ていて感じていたもやもや感が一気に解消され、夏への印象が大きく変わる回でした。第8話を単体として見たとしても、その完成度は高くこれまでのドラマにはない父子関係の描き方でした。
放送日・あらすじ
放送枠
フジテレビ 月曜日 21:00~
放送日
2024年8月19日
公式サイト
基本情報
原作
ありません
脚本
⽣⽅美久
キャスト
月岡夏 目黒 蓮
百瀬弥生 有村架純
南雲海 泉谷星奈
月岡大和 木戸大聖
南雲水季 古川琴音
津野晴明 池松壮亮
南雲朱音 大竹しのぶ
相関図はコチラ↓
https://www.fujitv.co.jp/uminohajimari/chart/
感想
傑作
前回の津野君の話がかなり良かったので、正直に言って第7話を超えるエピソードはないだろうなぁと思いながら見ていたのですが、この第8話はあっさり超えてきましたね。
長年会っていない親と再会する話、親との確執が解消される話というのはこれまでもいろんなドラマで描かれていると思いますが、本作はそのどれとも違う絶妙な描き方でした。
この第8話だけでもこのドラマには価値があるのではないかと思わせてくれます。
何がすごいのかというと、父親を単純な反面教師とも理想化された父親ともしていない点です。
いろんな観点から語ることができる内容で、私自身まだ考えがまとまっていないのですが、感じたことを順番に書いていこうと思います。
ドラマの良さ
ドラマと映画の違いはいろいろあると思いますが、大きな違いは長さです。
1話あたり45分としても10話で450分、映画は大体2時間ですので、4倍近い長さになりますね。
しかも地上波ドラマは1週間に1話放送されるので、全部観るためには3か月を要します。
視聴者は主人公が第1話で登場してから、約3か月間付き合わないといけないんですよ。
このドラマでも、夏の優柔不断で自分の意見をはっきりと言わない性格を散々見せられていたのですが、これが第8話へのフリになっているんですね。
さらに、このドラマに対する否定的な意見(否定とまではいわないけどもやもやした感じ)を抱く人が引っ掛かっていたのは、勝手に黙って産んだ水季の身勝手さや、それに対して何も言わない夏に対するもどかしさだったのではないかと思います。
こちらもこの第8話で解消されます。
こういう長い時間軸で丁寧に描いていくところがドラマの良さであり、本作の優れた点です。
父との再会
夏と父は2度会うのですが、その一度目の再開での父のクズっぷりは凄まじく、「うわぁ」って引いてしまう感じでした。
私が見ていて一番嫌だったのが、夏が椅子を蹴ったときに、周囲に謝るところでした。
もちろん椅子を蹴ってはいけないんですけど、失礼な言動で夏をいらだたせた結果椅子を蹴ることになったのですから、「お前がクズだから椅子を蹴ったんだろ」と言いたくなってしまうんですよね。
あの瞬間だけ彼が周囲に大人な対応をすることが、当てつけのようでいら立ちを感じるんです。
しかし、あとで詳しい事情を聴いた後に振り替えると、逆に見えてくるんですよね。
よく考えてみれば、彼だって大人ですから、再会したその時だけ紳士的に、父親らしく振舞うことだってできたと思うんです。
でもあえてそうせず、ありのままを見せたところに彼の贖罪であり、彼が父親として夏に示せる数少ない何かを見た気がするんですよね。
もちろんクズを演じたわけではなくナチュラルにクズだというところもいいですね。
「ズルいよな」という父の言葉に夏が怒りを露わにしたのは、彼の中にもそういう思いがあったからなのでしょうね。
2度目の再会
2度目に釣り堀であったとき、「カメラが趣味」の真相が語られます。
これが象徴的でいい話でしたね。
夏は海の写真を撮りまくっていて、第8話の冒頭でも「写真を撮るのが楽しい」という話が出てきます。
父の語った「子供の写真を撮る理由は毎日変化する子供が被写体として面白いから、写真が趣味というより子供が趣味だった」という真相は今の海と夏の関係と同じなんですよね。
両者がここで重なるんです。
写真を撮るというのは観察者であって、責任やわずらわしさを背負い込む親がすべき態度ではありません。
夏の前にはこれからもファインダー越しに無責任に海とかかわる道と、親になる道の二つがはっきりと表れるんですね。
父はそこで身を引いてしまいました。
夏がどちらを選ぶか岐路に立たされます。
不道徳な感情
夏は父の前で自分の抱えてきた暗い気持ち、周囲が優しいからこそ言えなかった戸惑いや怒りのような負の感情を父に向って吐き出します。
この後に夏が「父親になる」という決意を固めるというところに素晴らしさがあります。
単に父を反面教師として描いたり、逆に理想の父親像として描くわけでもなく、一人の等身大の人物として父親をとらえているところが、ほかのドラマでは見たことがない新鮮な描き方で、深く印象に残りました。
これまで夏が突然子供がいたことが発覚するという事態にどのような葛藤を抱えていたのかが一気に噴出する場面でもあり、夏の人間っぽさが増しましたね。
父の側も初めて夏に対して父親らしい振る舞いを見せているんですよね。
「ついてくるなよ」というセリフも二つの意味があるのでしょう。
「子供の前で椅子を蹴らなかったのは偉かった」というのも夏には彼が持てなかった父親としての自覚が備わっていることを示しているのかも。
「やめて」
このドラマには人を遠ざけるセリフが何度も登場します。
一度目が第1話での津野から夏へのセリフ、二度目が第7話の朱音から津野へのセリフ、そして今回の夏から弥生へのセリフです。
他人には近づけない結界のような家族という絆、血縁、そういうつながりからはじき出される人々、見えないけど確実にある境界線がこのドラマのテーマの一つなのかもしれないですね。
おわりに
田中哲司さんの演技が素晴らしかったですね。
この第8話だけでも見る価値があると思うので、ぜひいろんな方に見てほしいです。