30インチで観ています。

映画やテレビドラマの感想を書いています

海のはじまり(フジテレビ・月曜9時・目黒蓮/有村架純)第1話感想

 

 

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています(詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください)。

目黒蓮さん・有村架純さん出演ドラマ『海のはじまり』第1話が放送されました。『silent』の脚本で知られる⽣⽅美久さんの最新作で、目黒蓮さんも出演している話題作ですが、丁寧な筆致であらゆる親子関係を描いており、第1話から引き込まれました。

放送日・あらすじ

放送枠

フジテレビ 月曜日 21:00~

放送日

2024年7月1日

公式サイト

海のはじまり - フジテレビ

基本情報

原作

ありません

脚本

⽣⽅美久

キャスト

月岡夏  目黒 蓮
百瀬弥生    有村架純
南雲海     泉谷星奈
月岡大和    木戸大聖
南雲水季    古川琴音
津野晴明    池松壮亮
南雲朱音    大竹しのぶ

相関図はコチラ↓
https://www.fujitv.co.jp/uminohajimari/chart/

感想

印象的な冒頭シーン

冒頭波打ち際で戯れる親子の印象的なシーンから始まりました。

「海はどこから始まるの?」という曖昧な質問に母親は答えに窮します。
私はこのドラマのタイトルを見たとき「海に注ぎ込む大河」をイメージしていたので、このような意味であることには意外な印象を受けました。
波が常に打ち寄せ、一か所にとどまらない海とはどこからどこまでなのか?子供らしい素朴な疑問ですね。
後にこのドラマでは「海」「夏」という言葉がキャラクターの名前という意味を持っていることが明らかになるので、見ている私たちにもこのドラマのテーマがぼんやりと浮かんでくるんですよね。
ちょっと曇天すぎるような気もしますけど、素敵なシーンでした。

海辺であることと、その後死が唐突に訪れることからサリンジャーの『バナナフィッシュにうってつけの日』を連想しました。

父と子の物語

父と子の関係を扱った過去作として思いつくのが映画『そして父になる』ですね。
生まれた瞬間から母と子の関係は出来上がり「母になる」のに対して、「父になる」のはある明確なきっかけがあるわけではないという点で、両作に共通性はあるように思います。
また、突如知らない子供が訪ねてくるという展開は過去の月9ドラマ『人にやさしく』にもありました。
こういう突如親子になる、親子のような関係になる作品は少なくないです。
むしろ定番かもしれません。

さらに広く類似した作品を探すと、例えば『いま、会いにゆきます』とか『薔薇のない花屋』とかもなんとなく似ているような気がしました。

そういう似たテーマの作品の中で、本作の特徴は一組の父と子の限らない親子関係を描いているところにあるのではないかと思います。
喪服をそろえるために実家に帰った息子の様子から察してネクタイを差し出す父親の様子が描かれていました。
第1話ではあまり直接的な説明はされていませんが、公式サイトによると彼らに血の繋がりはないんですね。
ほかにも不妊治療の末に娘を生んだ水季の母親や、海と親子同然の津野など、様々な親子関係が今後描かれえると思います。

⽣⽅美久さん

私は『silent』を見ていないので、『一番好きな花』と本作の第1話を見た印象になりますが、生方さんの脚本は価値観を逆転させることが多いように感じます。

主体性がなく周囲に合わせてしまう夏に対して水季は「自分より周囲を優先できるって凄いですね。」と肯定的に受け入れます。
自然なやり取りのなかで惹かれあう瞬間を描きつつ、しかも今後の展開を予感させる手法のさりげなさが、見ていて心地よいのだと思います。
同じ価値観を共有しているとか、同じ趣味を持っているとかではなく、パズルがカチッとはまったような出会い、お互いをリスペクトした関係性がその場で結ばれるライブ感が現代的です。

さて、夏の周囲に合わせてしまう性格がのちに二人の運命を左右します。

すでに就活をはじめており、一週間気づかなかっただけでも「不安にさせてごめん」と謝る夏の様子を見て、水季は一人で産む決意をしたようです。
彼女が一人で何でも決めてしまうのは、そういう性格だというだけではなく、夏を思っての行動なのでしょう。

「一週間気づかなかくてごめん」のやりとりはくどいようにも感じましたが、その後の7年間の空白を経た彼の心境を想像するうえで、このやり取りは大きな意味を持ちますね。

お葬式

お葬式も印象的なシーンの連続でした。
友人に対して、怒りをあらわにするところがあるのですが、それは彼自身が「水季なら一人で大丈夫だろう」と自分に言い訳をしていたからなのでしょう。
彼はこのお葬式を通じて自身のふがいなさを痛感し続けます。

津野から向けられた敵意・「何も知らないんですね」という言葉は、理不尽なようにも思えますが、「知ろうとしなかった」彼にとっては最も痛烈な批判です。
言葉にこそ出していませんが、彼は「自分の娘かもしれない」とどこかで思っていたでしょうし、娘だと分かったあとでも「引き取ります」とは言わず、言い訳を繰り返しているんです。

大竹しのぶさんが出演しているということもあって、水季の関係者と夏の対話は『それでも、生きてゆく』の加害者家族と被害者家族のような緊張感を感じました。
加害者家族が被害者家族を避けていて、向き合わなかったことへの批判的なまなざしと、一方で彼らの事情も分からないわけではないという複雑な思いが似ています。

子役のレベルを超えている

夏を演じた泉谷星奈さんは素晴らしかったです。
私は演技について素人なので(というよりただのドラマ好きなので)、細かく語ることは憚られるし、そもそもできないのですが、彼女の一つ一つの表情やセリフには意図が感じられるんですよね。

おわりに

月9というドラマ枠は30年以上続いています。過去の名作は視聴率が高かったというだけではなく、その時代を象徴する作品だったからこそ名作たりえているのだと思います。
そういう意味で、本作が月9の歴史に名を刻む名作になることを期待しますし、そうなる可能性はかなり高いと思います。