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Believe(テレビ朝日・木曜9時・木村拓哉)第9話感想

 

 

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木村拓哉さん出演ドラマ『Believe』第9話が放送されました。「なぜ橋を崩落させなければならなかったのか?」というこのドラマの根幹にかかわる謎の真相は微妙だったものの、印象的なシーンが多数ありました。

放送日・あらすじ

放送枠

テレビ朝日木曜日 21:00~

放送日

2024年6月20日

公式サイト

テレビ朝日開局65周年記念 木曜ドラマ『Believe-君にかける橋-』|テレビ朝日

基本情報

原作

ありません

脚本

井上由美子

(『緊急取調室』『BG〜身辺警護人〜』)

キャスト

狩山陸          木村拓哉
狩山玲子      天海祐希
本宮絵里菜  山本舞香
南雲大樹      一ノ瀬颯
磯田典孝      小日向文世
秋澤良人      斎藤工
林一夫         上川隆也
黒木正興     竹内涼真
坂東五郎     北大路欣也

相関図はコチラ↓

相関図・キャスト|テレビ朝日開局65周年記念 木曜ドラマ『Believe-君にかける橋-』|テレビ朝日

感想

アンチヒーロー

今期このドラマとともに人気を博したTBS系ドラマ『アンチヒーロー』との比較から始めたいと思います。

『アンチヒーロー』のテーマは「失敗が許されない社会の息苦しさと歪み」です。
失敗が許されないため、間違いを犯したとしてもそれを認めることができず、結果的に不正をしてでも押し通そうとする悪役たちが描かれています。
「更生の機会を与えること」や「赦すこと」が社会にとっていかに大切かというリーガルドラマでは定番のテーマについて、社会全体に対象を広げて訴えています。
このように「人を裁く快感に浸っていると、いつの間にか自分の首を絞めることになりますよ。」というメッセージをエンタメとして楽しく伝えてくれた作品でした。
むしろ不寛容さは裁く側にある人々の精神をむしばんでいくことがしめされているんですよね。

『Believe』も「間違いを犯した男の再生」を描いています。
以前にも触れましたが、中心となるテーマは「一度間違えた人間は一生口をつぐまなければならないのか?声を上げる機会を奪われるのか?」ということでした。
『アンチヒーロー』とも共通するテーマですね。
『アンチヒーロー』が社会のシステム全体に注目しているのに対して、『Believe』は刑務所から逃亡した設計士の人生を通して、困難を乗り越えて人生を設計しなおそうとする男と、感化され応援する周囲を描いています。

どちらも面白い作品でしたね。

昨季には『不適切にもほどがある』が放送されていましたし、今後のドラマのトレンドとして社会の寛容性や不当な取り扱いへの抗議を扱った作品が増えてくるのかもしれないですね。

最終回の悪かった点

さて、最終回の内容を振り返ります。
結論から言うと、真相が急ピッチで明かされるという展開の中で、良かった点と悪かった点がありました。
まず悪かった点から書きます。
「なぜ、橋を崩落させなければならないのか」というこのドラマの根幹に関わる謎については十分な説明がされませんでした。
オリンピックでのゴタゴタや日本社会の忖度体質を想起させる内容でしたが、あまり説得力のない理屈でした。
狩山の脱獄を手引きした経緯も納得できるものではなく、ドラマの根幹にかかわる部分がフワフワしている印象は否めないですね。

もう一つ、急ぎすぎたことでキャラクターたちの描き方が不十分なところも見えました。
特に、秋澤弁護士(斎藤工)の設定は唐突な印象を受けました。
彼は自分の過去の投げやりな態度が、クライアントを死に追い込んでしまった(かもしれない)ことにトラウマを抱えていたそうです。
でも、これまでの彼の行為を「狩山のために相手の懐に忍び込んでいた」という理屈ですべて説明することは厳しい気がします。

最終回の良かった点

このようにドラマのかなり重要なポイントでネジが緩んでいて、本作には欠点が多いことは事実です。

しかし、これらの欠点が気にならないほど良いシーンもたくさんありました。
一番良かったのは、「橋の崩落事故について再審が必要」と付言された判決が出たあとの経緯を大胆に省略した構成です。

面会室のシーンで塀の中にいる磯田(小日向文世)と彼に面会する狩山を描くだけで何が起きたのかはわかりますし、立場の逆転した二人の様子を一気に描くことでインパクトがありました。
まるで黒澤明監督の『天国と地獄』のラストシーンのように、狩山と磯田の価値観の相違が描かれています。
潰れかけた会社を再建するという現実に向き合う磯田は、夢を語る狩山に対して日頃から苛立ちと憧れを抱いていたようです。
磯田は過去の狩山でもあるし、第1話での狩山と妻とのやり取りが背後に感じられるし、良いシーンでした。

もう一つよかったシーンはラストですね。
出所後思い出の碓氷峠を訪ねる狩山のシーンは印象的でした。
というのも今期テレビ朝日で放送されたドラマ『Destiny』では最終回で病気が治るんですよ。
この展開を見たときには「あぁ、このドラマも治るのね」とちょっとがっかりしたので、その分真相が明かされると感動的でした。
ちなみに『Destiny』でも碓氷峠周辺が登場しています。

二人の間にあった隙間にも橋が架けられたことを象徴するラストにふさわしいシーンでした。
結局裁判にも姿を見せなかった玲子が最後に狩山と会ったのかどうかは定かではないですが、このシーンは「会えなくても繋がっている」という二人の絆の深まりを描いていますね。

全話を通した感想

最終回ということで全話を通した感想を書きます。
まず、「一度口をつぐんだものは沈黙しなければならないのか?」といったテーマを「人間は何度でもやり直せる」という肯定的な姿勢で描いたところに好感が持てました。
ともすれば組織に踏みにじられる人間が失ってはならない尊厳や誇りについて、昨今の性被害を彷彿とさせる視点で描いており、非常に現代的でしたね。

周囲が否応なく感化されてしまうという現実離れした主人公に説得力を持たせることができたのは長年スターである続ける木村拓哉さんが持つ魅力がなせる業だと思います。
ほかにも、竹内涼真が演じた黒木は主人公が登場しない時間の多い本作を魅力的にしていましたし、最終回の小日向さんもさすがでした。

脱獄の経緯や事故の真相など、根幹にかかわる部分がいまいちなことや、狩山夫婦の距離感があやふやなこともあり、欠点が多い作品ではありましたが、最終回のラストシーンのように欠点を補って余りある魅力ある作品でした。

おわりに

7月からは韓国ドラマのリメイク『スカイキャッスル』が放送されるようです。
海外リメイク作品って、文化的な違いがあることはもちろん、制作されるまでに時間が経過するため、時代の空気感も少し変わってしまっている気もします。