30インチで観ています。

映画やテレビドラマの感想を書いています

若草物語(日本テレビ・日曜10時30分・堀田真由/仁村紗和/畑芽育/長濱ねる)感想

 

 

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています(詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください)。

堀田真由さん・仁村紗和さん・畑芽育さん・長濱ねるさん出演ドラマ『若草物語~恋する姉妹と恋せぬ私』全10話の放送が終わりました。正しく誠実に生きることの難しさと尊さを描いた本作について、全10話を見届けた感想を書きたいと思います。

放送日・あらすじ

放送枠

日本テレビ 日曜日 22:30~

放送日

2024年10月06日~2024年12月15日

公式サイト

若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―|日本テレビ

基本情報

原案

『若草物語』ルイザ・メイ・オルコット

脚本

松島瑠璃子

キャスト

次女・町田涼 堀田真由
長女・町田恵 仁村紗和
三女・町田衿 長濱ねる
四女・町田芽 畑芽育

行城律  一ノ瀬颯
小川大河 渡辺大知
沼田灯司 深田竜生

相関図はコチラ↓
相関図|若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―|日本テレビ

感想

テレビで性加害事件が報じられるたびに、SNS上で「なぜ警察に相談しなかったのか?」と疑問を呈する意見が述べられるのをよく目にします。
確かに、事件として加害者を罪に問うためにはできるだけ早く警察に駆け込むのがベストなのかもしれないです。
でも、そんなことは被害者の方だって百も承知だと思うんですよね。
いろんな心理的な葛藤を抱える中で、「正しい」選択肢を選ぶことがいかに困難か、想像力を働かせる必要があります。

私がこの作品に感じた魅力は、この「正しく生きること」の難しさを描いている点です。

長女

4姉妹の長女・恵(仁村紗和)はハローワークで契約社員として働いています。
非正規職員であるため終身雇用ではありません。何かトラブルを起こして契約更新されないこと、雇い止めされることにおびえながら暮らしています。

彼女は上司から、異様に馴れ馴れしいメールを送り付けられるセクハラに悩まされていましたが、最初はそのことを彼女自身がセクハラだと認めていないんです。
「単なるおじさん構文なのかな?」「むしろ若い社員との距離を縮めようとして、頑張ってくれているのかな?」なんて言い訳を探しています。

なぜ彼女がセクハラを認められないかというと、非正規社員としてトラブルを起こしたくないという気持ちがあるのは当然ですが、それだけではないんです。
セクハラだと認めることは、自分を「被害者」「弱い存在」だと認めることになり、それは彼女にとって自尊心を深く傷つけることになってしまうんです。

私は4姉妹の中で一番、恵のエピソードが共感できました。仁村紗和さんの演技もすごくよかったと思います。
仁村さんといえば『真夏のシンデレラ』ではシングルマザー役を演じていて、その役は境遇的に今回の役とも似た部分があるのですが、今回のほうが役柄としては魅力的でした。
恵は長女として家計を支えるしっかり者なのですが、それゆえに次女ほど「正しく」はないんです。自分と同様セクハラに苦しむ同僚を一度は見捨ててしまう弱さを抱えています。
このあたりのリアルさ、人間っぽさが仁村さんの演技と相まって心に迫るものがありました。

次女

本作の主人公は次女の涼(堀田真由)です。
彼女は男性を中心とした価値観や恋愛至上主義を毛嫌いしており、そのことが理由で退職し、脚本家の途へ進みます。

私が彼女のエピソードで好きなのはスピンオフドラマの脚本を任される展開です。
商業的に成功するため、一度は過激な内容の脚本を書きあげますが、思い直して女性同士の友情の物語に変えてしまうんですね。
端役であっても真剣に向き合い、役者として成功することを志している俳優(中田青渚)の誠実さに、彼女も誠実さをもって答えるんです。
こういう誰かの示した努力や誠実さが周囲にバトンをつなぎ波及していく展開には、見ていてすがすがしさを感じました。

涼の役柄は公式サイトでも「トライ&エラー」と紹介されている通り、かなり揺れ動きます。
自分の中で高邁な理想があるものの、それを体現できるほどのスキルはまだないため常に未熟さを併せ持っています。
そこがもどかしくて、このもどかしさが作品全体の推進力にもなっています。
それゆえに、このドラマを面白いと思えるかは、彼女を好きになれるかどうかにかかっています。

「やりたいことは明確にあり、講釈は一流だけど、それを実現する力はない」彼女の状況を「新人の初々しさ」としてとらえることができる人なら本作は特別な作品になるでしょう。
ただ、私には微妙でした。
彼女の未熟さがあまり感じられないんですよ。
もう少し、涼が打ち負かされる展開があってもよかったかもしれません。

全体的に

このドラマは「恋愛がすべてではない」という主張を軸に構成されています。
しかし、このドラマの結末にその価値観を覆すほどの説得力があるかというと、そうでもないかな、というのが率直な感想です。
最終回は早足で終わった印象すらあります。
まぁ、彼女たちは何かを成し遂げたわけではなく、このドラマは登場人物たちが送るであろう長い人生のほんの一瞬を切り取っただけだということで納得することにします。

おわりに

予想していたよりはずっと楽しめました。
でも、原案の若草物語から引き継いだ設定がかえって邪魔になっている部分もあったように感じました。
特に最後の涼が自身のドラマに『若草物語』とタイトルをつけるシーンには違和感を覚えます。
普通にオリジナル作品として作ったほうが良かったかも。