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グランメゾン★東京 スぺシャル(TBS・日曜9時00分・木村拓哉)感想

 

 

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木村拓哉さん出演ドラマ『グランメゾン東京 スペシャル』が放送されました。スペシャルドラマとして、連続ドラマと映画の橋渡しをするだけではなく、単体としてもメッセージにあふれ、十分楽しめる作品でした。

放送日・あらすじ

放送枠

TBS 21:00~

放送日

2024年12月29日

公式サイト

『グランメゾン東京』|TBSテレビ

基本情報

脚本

黒岩勉

キャスト

尾花夏樹  木村拓哉
早見倫子  鈴木京香
平古祥平  玉森裕太
芹田公一  寛一郎
松井萌絵  吉谷彩子
久住栞奈  中村アン
相沢瓶人  及川光博
京野陸太郎 沢村一樹
丹後学   尾上菊之助

相関図はコチラ↓

相関図|TBSテレビ:『グランメゾン東京』

感想

映画化

『グランメゾン★東京』は2019年に放送されていた連続ドラマでこの度映画化されました。

映画『グランメゾン・パリ』

このドラマは映画の公開に向けて放送されたスペシャルドラマですね。

スペシャルドラマ

映画の前日譚として制作されているこのドラマにはいくつかの役割があると思います。
結論から言えば、このドラマはその役割を高いレベルで果たしており、完璧に近い作品でした。
このドラマを、私は当時結構楽しみに毎週見ていたと思うのですが、そんな私でもこのスペシャルドラマを視聴するまでは「なぜ5年も経過した今になって映画化するのか?」という疑問を感じていました。
正直、映画化するほどのドラマではなかったような気がしたからです。
しかし、このドラマを見終わった瞬間に、そういった疑問はすべて解決しましたね。

良かった点

まず、スペシャルドラマとして2019年の連続ドラマの内容や各キャラクターの設定を思い出してもらう必要があります。
この点について、総集編的に連続ドラマ時代の映像を短く再編集したものを使って簡潔に説明した以外は、それほど詳しく説明していません。
それでも、なんとなく思い出せるんですよね。
ストーリーを理解するうえで最低限の情報だけにとどめていて、退屈することなくストーリーに入れました。

代わりにこのドラマが時間をかけて描いていたのは、「コロナ禍を乗り越えたキャラクターたちの苦悩」です。
コロナ禍直前に放送を終えたこのドラマのキャラクターたちの現在の様子を見るだけで「コロナ禍の間も、彼らは東京の片隅でグランメゾン東京というお店を営んでいたんだなぁ」と、違和感もなくあの世界に入ることができるんです。
キャラクターたちの実在感が連ドラ当時より一気に増しました。

そうすると、演出の感じとか、セリフの感じとか、徐々に記憶がよみがえってくる感じがして、「面白いドラマだったよなぁ」って気分になってくるんですよね。
それと同時に、コロナ禍の飲食店の状況を思い出して、今このドラマを再び作る理由に得心します。

あと、「命に感謝し、食材の良さを生かす料理」というこのドラマのテーマもさりげなく思い出させてくれるようになってます。

単体のドラマとして

スペシャルドラマのよくある失敗パターンは単なる総集編に過ぎない、もしくは本編と同じことを繰り返す、の二つです。
このドラマはどちらにも当てはまっていません。
つまり、単体のドラマとして抜群に面白いんです。

グランメゾン東京はコロナ禍の苦境を乗り切るため、不利な条件でフードコンサルティング会社と提携を結んでいます。
このドラマの特徴として、飲食業界のリアルな裏側を描いている点が挙げられますが、今回はライセンス契約やスターシェフの末路のような内容で興味深かったですね。

北村一輝さんが演じるコンサル会社の社長は、タイパ・コスパ重視の人物で、糖質制限のために食材を無駄にしたり、食事中もメールを打ったりする人物なんです。
彼は「時間をかけて80点を100点にするのは時間と労力の無駄。80点でいかに稼ぐかが大切」という割り切った考えの持ち主です。
すし職人の修行の話はよく堀江貴文さんが例に挙げる内容ですね。
「なるほど、たしかにそうかも」と思う内容も含んでいるのですが、見ていて嫌な気分になる彼の食事の様子と合わさると、軽薄な意見に聞こえてくるんですね。
話は前後しますが、最初平古が試作していた料理は「基本に忠実な」レシピでした。
おそらく、youtubeで学べる知識って、この「基本に忠実な」ものに留まるんだと思います。
食材を生かす感性はやはり経験と真摯な取り組みの中で身に着けていく以外にないのかもしれないですね。
なぜ料理に手間暇をかけるのか?なぜ妥協しないのか?、二つの価値観の衝突と危機を平子ら若手シェフが料理で乗り越えるところにカタルシスがあります。

ゲスト

北村一輝さんはもちろん、スペシャルドラマのゲストとして出演していた窪田正孝さんも良かったです。
今回の特徴として、料理を食べたときに「美味しい」とか、セリフによる味の説明があまり無いんですよ。
尾花も「何も言わなくても、作った本人が一番わかっている」って言ってました。
そんな中、窪田さんのリアクションで、驚き、焦り、感動、怒り、が表現されています。

木村さん

最近の木村拓哉さんのドラマは、木村さんが前面に出るというよりは一歩下がって、次世代に継承する感じのストーリーが多いです。
このドラマもそうなっていて、平古シェフらが「自分のために」店を再建する、尾花の店だったグランメゾン東京を自分たちのオリジナルに進化させ、星を取り戻すストーリーです。
映画では舞台をパリに移すようなので、映画には出演しないキャラクターたちをそのままにしないのも良かったと思います。
寿司屋の10年の修行の話は、尾花・早見世代と平古世代の関係に収れんしていますね。

おわりに

2時間のドラマとして面白く、連ドラと映画をつなぎ、コロナ禍の苦境や五年間の空白を埋め、キャラクターたちの魅力を再認識させてくれた良作でした。
個人的には今年観た中で一番面白いドラマでした。
欲を言えば、「すべて尾花が書いた筋書きだった」というのはいらなかったかも。