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大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(NHK総合・日曜8時00分・横浜流星)第1話感想

 

 

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今年の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』が放送されました。大河ドラマの主役としてはそれほど知名度のない主人公でしたが、現代にも通ずる社会問題に対するまなざしや、経済的・ビジネス的な切り口が見られ、これまでにない大河ドラマになりそうです。

放送日・あらすじ

放送枠

NHK総合 日曜20:00~

放送日

2025年1月5日

公式サイト

大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」 - NHK

基本情報

脚本

森下佳子

キャスト

蔦屋重三郎 横浜流星
花の井   小芝風花
平賀源内  安田顕
田沼意次  渡辺謙
田沼意知  宮沢氷魚

相関図はコチラ↓

大河ドラマ「べらぼう」キャスト人物相関図 - 大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」 - NHK

感想

知名度

昨年の大河ドラマの主人公は紫式部という超有名人でした。
それに比べると本作の主人公・蔦屋重三郎の知名度はかなり低いのではないか?と思います。
この10年間の大河ドラマの主人公と比べても、渋沢栄一より知名度が低いでしょうね。
金栗四三さんと同じぐらいかな?

大河ドラマを観る方って、時代劇が好きな人か、日本史が好きな人が主だと思います。
それ以外では、日本史を実際に勉強中の方や、教養として日本史を学びなおすためにご覧になっている方も結構多いんじゃないかな。
勉強のために見る人にとってはピンとこない人物でしょうね。
蔦屋重三郎が高校の日本史教科書に登場するのは、松平定信の寛政の改革のあたりで、山東京伝と一緒に少し名前が出る程度です。
よっぽどの日本史好きでもない限り、覚えていないでしょう。

では、そういった教養を身に着けるために見ている人にとって、このドラマは役に立たないかというと、そんなことはないです。むしろ最高の教材かも。

なぜかというと、一つには蔦屋重三郎の周辺人物は結構有名人が多いからです。
初回だけでも田沼意次と平賀源内が登場していました。
ここが結構重要です。
文化史って、普通に勉強すると文化史だけを独立して暗記することが多くて、時代的な背景がつかみにくいんですよね。
「どの作品と、どの作品が同時代のものなのか?」把握するのには、結構苦労した記憶があります。
しかも、この時代の文化史では、田沼意次から松平定信への交代を様々な規制と結びつけて覚える必要があるんです。
この面倒な知識を自然と吸収できるこのドラマは、日本史学習にはうってつけです。
単純に「文化史ってビジュアルで学習したほうがわかりやすい」ということもありますし、見て損はないと思います。

合理主義者

私を含め、多くの人は日本史を学習する予定はないでしょうし、学習の話はこれぐらいにしておきます。

私が面白いと感じたのは経済的な視点です。

冒頭から吉原が抱える問題点が挙げられます。
幕府から公認された遊郭であるが、辺鄙な場所にあり客足が遠のいていることや、非公式なはずの宿場での営業に客を奪われていることが示されていました。

ここで重三郎は「陳情」に田沼意次のもとを訪ねるんです。
これが面白い。
田沼といえば賄賂政治の権化のイメージですし、実際にこのシーンでも賄賂を受け取っています。
にもかかわらず、時代劇の定番、「賄賂を渡して便宜を図る」とは真逆の展開になるところに脚本の面白さがあります。

田沼は「国益に反する」と重三郎の真っ当に思える陳情をはねのけます。
ここで示される理屈がすごく合理的で、「宿場が維持されなければ、商業が成り立たない。ならば宿場に儲けさせたほうが良い。」という内容なんですね。
「確かに吉原は『天下御免』という以外に何も国にメリットが無いな」って納得させられてしまいます。

私利私欲にまみれた賄賂と、全体の利益を重んじる合理性が同じシーンに同居しているのが面白いです。
実際の政治を考えてみても、賄賂だけで全てが動くと思うほうが単純すぎますよね。
悪徳政治家だって部分の利益だけでなく、全体の利益を捉えていないと大物にはなれません。
そういった清濁飲み合わせるスケールの大きさが、田沼に説得力を持たせていました。
本作の田沼の考え方って、多分イギリスの自由主義的な経済観を移植したものなんじゃないかな?

さらに田沼は「お前は客を呼ぶ工夫をしたのか?」と問いかけます。
誰かを頼るのではなく、自分で道を拓く主体的な生き方はこれまでの大河ドラマにはない、まるで経済ドラマのような魅力がありました。

現代社会との共通点

時代劇の魅力は「その時代を舞台としながら、現代を描く」ところにあります。
本作では、吉原での格差や私欲に走る既得権益の面々、貧困にあえぐ人々など現在と共通する社会問題が登場しています。
使い捨てにされる非正規のような描写もあったかと思います。
賄賂だって、最近の裏金と共通点を見出すことができるでしょう。

そんな病んだ現代社会ではSNS上で、他者への猛烈な批判や、逆に冷笑的な諦めの声をよく耳にします。
本作の重三郎の生き方、「政治が悪い」と批判するだけではなく、工夫を凝らし、困っている人々を救済するために奔走した行動力は痛快に映りますし、憧れますね。

おわりに

「それで、君は何をしたの?」という田沼の目線を持っておくことは大切ですね。
ただ、一方で行き過ぎると自己責任論のようにもなってしまうので、バランスは大切です。

さて、2話以降も視聴すると思いますが、感想の投稿は今のところ予定していません。