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榮倉奈々さん、窪田正孝さん出演ドラマ、『Nのために』を最終話まで観終えたので、これまで書いてきた各話の感想をまとめ、他の湊かなえ原作ドラマと比較しながら、ドラマ全編を通した感想を書き加えました。成瀬という本作に特有な人物を中心に振り返ります。
各話感想
金曜日22:00~TBS系列で放送
第1話 2014年10月17日 父の豹変
第2話 2014年10月24日 放火
第3話 2014年10月31日 島を脱出
第4話 2014年11月07日 野口夫妻への接触
第5話 2014年11月14日 沖縄
第6話 2014年11月21日 安藤と希美
第7話 2014年11月28日 N作戦2始動
第8話 2014年12月05日 N作戦2の中身
第9話 2014年12月12日 放火事件の真相と作戦の実行
第10話 2014年12月19日 事件の顛末とエピローグ
配信状況はこちらを参考にしてください
Nのために - ドラマ情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarksドラマ
基本情報
原作
湊かなえ
脚本
奥寺佐渡子
この組み合わせは前年の『夜行観覧車』、2017年の『リバース』と共通です。
また、2021年の『最愛』は湊かなえ原作ではありませんが、スタッフ陣は共通です。
主題歌
家入レオ「Silly」
関連作の紹介
『夜行観覧車』
高級住宅街ひばりが丘に引っ越したことをきっかけに崩壊する中流家族と、隣家で起こった殺人事件のお話です。
鈴木京香さん、石田ゆり子さん、杉咲花さん、中川大志さんらが出演しています。
子役時代の吉川愛さんも出演していますよ。
事件前と事件後を行き来する構成が本作に近いです。
とにかく暗くて、観ていて辛くなる作品です。
『リバース』
平凡なサラリーマン深瀬のもとに告発状が届き、大学時代に交通事故で死んだ親友の死の真相に向き合わざるを得なくなった当時のゼミ仲間4人の物語です。
藤原竜也さん、市原隼人さん、戸田恵梨香さん、玉森裕太さん、三浦貴大さんらが出演していました。
夜行観覧車よりは前向きで見やすく面白い作品です。
個人的にはこっちのほうが好きかな。
過去の事件が現在に影響していることや、瀬戸内海が舞台として登場している点、老刑事が登場する点など本作との共通点も多いです。
窪田正孝さんもカメオ出演しています。
『最愛』
連続殺人事件を追う刑事・宮崎と真田ウェルネスの代表取締役・真田梨央の15年前の因縁と愛の物語です。
吉高由里子さん、松下洸平さん、井浦新さんらが出演しています。
3作を混ぜ合わせてマイルドにした感じの作品です。
主人公に非があまりないのでヒリヒリ感が少なくて一番見やすいです。
韓国でリメイクされるそうですよ。
主な出演
杉下希美(榮倉奈々)
成瀬慎司(窪田正孝)
安藤望(賀来賢人)
西崎真人(小出恵介)
野口貴弘(徳井義実)
野口奈央子(小西真奈美)
高野茂(三浦友和)
全編を通した感想
複雑なストーリー
進行するストーリー自体はDV被害にあっている奈央子を救出するだけなので単純ですし、登場人物もほぼ6人のNに限られているので、本来ならそれほど難しくないシンプルな作品になるはずです。
しかし、このドラマでは全ての登場人物同士の関係が濃密に描かれているためかなり複雑に感じます。
そこが面白さでもあります。
例えば奈央子は西崎にとっては見殺しにした母であり、虐待を受けていた自分でもあるのに対し、希美にとっては生活力がなくおかしくなってしまった母であるという風に、同じものにそれぞれのキャラクターが全く違う何かを重ねていることがあります。
他にも、西崎と安藤が現実社会に生きる上昇志向のある男と過去に囚われ文学に逃避する男という風に対比されています。安藤と成瀬も対照的に描かれています。
このように人物相関図の中にそれぞれの関係を書き込んでいくと真っ黒になるぐらいいろんな要素が盛り込まれています。
そしてその一つ一つに火やドレッサーなど象徴的なアイテムが配置されているんです。
明確なところとあいまいなところ
複雑と書きましたが、実は成瀬をストーリーから排除するとある程度分かりやすくなります。
成瀬の役割を西崎に背負わせれば、西崎と安藤という二人の間で揺れ動く希美という3角関係になるからです。
しかし、ここに成瀬を加えると一気に複雑になるんです。
成瀬っていう男は実はどんな人物かよくわかりません。
西崎や安藤は明確に説明できますが、成瀬は単に優しい人としか言えないんです。
私は最初『白夜行』のイメージで成瀬と希美を見ていましたがこれが間違いでした。
成瀬って冷静に考えれば大したことをしていないんですね。
「罪の共有」という大げさな言葉に惑わされますが、放火をしたのは成瀬の父だし、殺人の罪を背負ったのも西崎だし、そもそも罪がないんです。
西崎と希美が罪を共有するついでに成瀬が紛れてきただけです。
それに2014年に死ぬのは成瀬ではなく希美なんですよね。
強いて言えば成瀬がしたことは「一番困っているときに声をかけてくれた」ってことです。
安藤のように相手の窮地を利用しようとしたり、独りよがりになったりしません。
たとえ倫理的に間違っていても皆が幸せになるなら、何も言わず手を貸してくれるんです。
オレオレ詐欺もやりますが……。
逆に成瀬も希美に対して同じ感情を抱き、恩義を感じて生きていたわけですから、西崎、安藤、成瀬はそれぞれ希美のある一面を代表しているのかも。
安藤は家庭が壊れる前の自分、西崎は家庭が壊れた後の自分、成瀬は現実に向き合う自分といった感じでしょうか?
その中で希美が最も自分らしいと思える存在が成瀬なんでしょう。
これは私なりの結論ですので、多様な考察があると思います。
いずれにしても成瀬という人物は考えれば考えるほど謎の人物で、ドラマに深みを与えてくれています。
小説との構成の違い
私は原作は未読なのではっきりとしたことは言えませんが、小説とドラマでは構成が大きく異なっているんだと思います。
原作では登場人物の独白で構成されているのに対し、ドラマでは高野という探偵役を登場させ2000年ごろ、2004年、2014年の三つの時間軸でストーリーを展開させようとしています。
しかしこれが上手くいっていません。
まず西崎、安藤が登場するのは第4話からなのに、2014年の時間軸では先行して登場しています。
さらに高野が関心を抱いているのはさざなみ放火事件の方で、スカイローズガーデンでの殺人事件はそのついでに過ぎません。
探偵役としてふさわしい人物か微妙です。
そしてこのドラマで何かアクションを起こすのは西崎です。
西崎が登場していない島編は辛いだけであんまりおもしろくありません。
さらに2014年では特にストーリーがあるわけでもないんです。
ただ過去を順番に語っているだけです。
最終回でエピローグのように付け足した話も、視聴者が考える余白を減らしているように思います。
この辺りは『リバース』では大きく改善されています。
現在のストーリーを軸に登場人物4人が過去の事件を振り返り、新たな事実が浮かび上がるというわかりやすい構成になっています。
探偵役も当時事件を担当していた刑事になっています。
また、『最愛』は『Nのために』のリベンジとして作られたように感じます。
大切な誰かのために罪を犯すというテーマは『Nのために』と共通です。
ここでも現在に軸を置き、探偵役を当時の事件にも関与した顔なじみの刑事にするなど改善されています。
逆に原作からの改編でうまくいっているのは『灼熱バード』の取り扱いです。
『灼熱バード』という西崎の小説が原作では結構な比重を占めるようですが、ドラマ版ではうまく割愛していたと思います。
その他
急におかしくなった父親(光石研)や化粧水を塗りたくる母親(山本未来)などショッキングなシーンが印象的でした。
俳優さんたちは好演していたと思います。
公式サイトに監督の出演者に対する印象が書かれています。徳井さんを起用した理由のところが面白いですよ。
島の景色や島の方言もよかったですね。
あと、家入レオさんの『SILLY』っていう曲も印象的な場面で流れてきて、2010年代の雰囲気を今に伝えてくれます。
まとめ
個人的に好きな順は
『リバース』>『Nのために』>『夜行観覧車』>『最愛』
ですね。
安藤が好きで、もっとわかりやすいドラマの方が好みの人は『リバース』、
島編が好きでドロドロしたのが好みの人は『夜行観覧車』、
考察が好きな方は『最愛』をおすすめします。